このたび、秋吉秀保前会長の後任として、日本獣医麻酔外科学会の第12代会長を拝命いたしました。35年以上の歴史を誇る本学会の会長として、今後取り組むべき課題を前に、またこれまで獣医外科学の発展に尽力されてきた尊敬すべき諸先生方のことを思い浮かべますと、その責任の重さに身が引き締まる思いです。
本学会ではこれまで、学生や若手獣医師をはじめ、外科に関心を持つすべての獣医師が活躍できるよう、さまざまな取り組みを行ってまいりました。各地区や三分野委員会、学術集会による教育体制の整備や、昨年度からスタートした麻酔認定医制度の導入などを通じて、学会は飛躍的に発展し、会員数も増加しております。その勢いは現在も続いており、2025年7月時点の会員数は2,500名を超え、過去最多となっております。
このように明るいニュースもある一方で、麻酔や外科は終了時間が予測しづらく、時に重大な結果を伴い、その対応にもまた多くの時間を要するという特性があります。そのため、医療の世界でもこれらの分野の人気は低下傾向にあります。こうした背景を踏まえ、本学会としては引き続き麻酔や外科の魅力を積極的に発信していく必要があると考えております。
命を救うためには、臨床獣医師がある程度、自らを犠牲にして知識や経験を積み重ねていく必要があります。この点については近年、あまり語られなくなっていますが、最終的な責任や提供すべき獣医療の質を考えると、決して避けて通ることはできないと私は思います。ただし、こうした努力も教育によって効率化できると信じています。学会としては、学術的価値のある研究や高度な技術の追求は当然の使命ですが、それと同時に、外科や麻酔を専門とする人材の育成や、一般臨床医の技術レベルの継続的な向上を図ることも、私たちの重要な責務だと考えております。
また、これまであまり重視されてこなかった倫理的教育についても、今後は適切な疼痛管理や手術介入に関する内容を中心に、卒後教育の一環として取り上げていきたいと考えております。さらに、他の学術分野や関連団体との連携、アジアをはじめとする海外との交流も今後優先的に取り組むべき重要な課題と捉えています。
理事会では、これらの課題について真摯に協議を重ね、会員の皆様が日本獣医麻酔外科学会の一員であることに誇りを感じていただけるような学会運営を目指してまいります。
結びにあたり、獣医師が何よりも麻酔や外科という自身の専門分野に誇りと関心を持って学び続けられるよう、そして、一頭でも多くの病気に苦しむ動物たちを救えるような環境づくりを通じて、ご家族の皆さまに安心していただける医療の提供に努めてまいります。今後とも皆さまのご支援とご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
2025 年 7 月
一般社団法人日本獣医麻酔外科学会
第 12 代会長 高木 哲
これらの目的を達成するために以下の各委員会を設置しています。